歯医者に成りたい人へ

俺は、私は歯医者に成りたいという人、そんな物好きな人の為のページです。

 歯医者は儲かりそうだ、若い女の子にいつも囲まれていて羨ましい、外車に乗れそうだ・・・だから俺は歯医者に成りたい。そんな理由で歯医者を目指そうとしたら、大変な間違いです。
歯医者が儲かっていたのは、遠い昔の話です。どこの歯科医院にも患者が溢れ、歯が入った時に、「はい、〇〇万円です。」てな調子で現金はガッポガッポ入るは、税金は優遇税制でほとんど払わなくていいはで、ホンとに歯医者は儲かりました。しかし、それは40年位前の話です。今の歯医者は、平均的には、普通のサラリーマンと大差ない所得です。本当の話です。平均がそれ位ですから、中には食っていけない歯医者もいます。当然、未だに、昔と同じような状態の歯医者もいますが(しかし、ほんの一握りですが)。なぜその様になったかと言うと、ひとえに歯医者が多くなったからです。また、虫歯の数も減りました。今、日本の人口は約1億2000万人ですが、1億人位になった40年位前、歯医者の数は、今の3分の1位でした。需要と供給のバランスが変わってきたのです。虫歯の数も減っているわけですから、バランスの変化は、ますます歯科医師過剰の方向へ向かっています。要するに、構造不況の業界であるわけです。
そんな中で、新しい変化と言えば、需要の質が、変わりつつある事です。今までであったら、歯医者は、歯が痛くなってから行く所でしたが、現在では審美歯科(要するに見た目を良くする歯科)、予防歯科etc.等が注目されています。しかし、日本人は、未だに、少し八重歯だと可愛いとか言っていますから、その審美歯科分野に関してもそれほど期待は持てないでしょう。結構前ですが、某有名芸能人の旦那が審美歯科医という事で、あたかもそれがすごい事のように取り上げられましたが、歯科医同士の感覚では、審美歯科医と言えば、金儲け主義の代表で(誠実な審美歯科医の方々すみません)、その感覚もじきに、一般の人々の間に浸透していくでしょう。そうなると、もうホンとにメシノ食いだねが尽きていってしまいます。もう、お先真っ暗以外の何者でもありません。
さて、本題の、歯医者に成るにはどうしたらよいか。
日本の法律では、歯科医師の国家試験に合格しない限りは、歯科医師として患者さんの診療にあたることは出来ません。という事は、国家試験を受ける資格が必要です。その為には、歯科大学か歯学部に入学して、卒業しなければなりません。結局、関門として

  1. 歯科大学または歯学部に入学する
  2. 卒業する
  3. 国家試験に合格する

以上の三つの関門を突破して初めて、歯科医師に成れるわけです。
第一関門の大学に入るのがやはり、一番の難関になりますが、ここで大きくふたつに分かれます。

  1. 私立コース
  2. 国公立コース

です。
ここで、大事なお金の問題が出てきます。1の私立コースだと入学してから卒業するまで、どんなに安くみても、3000万円以上かかります。入学金1000万、授業料、毎年350万位で6年間です。
これ位の、金額になると、一般の家庭のご子息が、私立コースを目指すのはかなり難しいと言うよりは、無理でしょう。限られた、家庭のご子息だけに許されたVIPのコースと言えます。VIPの中での競争です。
そこで、このコースを諦めて、2の国公立コースにすると、お金の問題はかなりクリアされます。今の、金額はよく解りませんが、自分の時は入学金20万円、授業料、毎年20万円位だったと思います。計140万円ですか。今は、もっとかかると思いますが、500万円は超えないと思います(しかし、VIPでない、広い受験者層の中での戦いになるわけですから、入学試験は、国公立の医学部に入るのに準じて熾烈な争いになります)。しかし、最低6年間大学に通うわけでその間は、すねかじりです。授業は、専門課程の3年生からは、すべて必修科目なので、アルバイトで学費を稼ぐ、時間的な余裕もそれほどありません。家庭教師などは、結構引く手あまたですが。しかし、時間がないので、それ程たくさんはできません。
以上は、授業料や入学金だけで、それ以外に、教材費、本代その他いろいろかかります。
そして、入学する為の、お勉強はどの程度したらよいのか。そんなことは、予備校に聞けば良いのですが、構造不況が見えているこの業界、人気がなくなり、ドンドン入りやすくなる傾向が、少し前まではありました。しかし、この長引く不景気で、資格を持てる学部としての、医学部、歯学部の人気が再燃しつつあります。医者、歯医者に成れば、まず食いっぱぐれはないだろうとの考えです。皆さん、入ってしまえば、成ってしまえばと考えての事でしょうが、今から歯学部に入学したって、卒業して歯医者に成る頃には、今以上の大変な構造不況の業界になっています。それでも、成りたい人は、どうぞ一生懸命勉強してください。
入学したら、今度は無事に卒業できるのか。余程の、怠け者で無い限りは卒業できます。留年は6回まで、12年間の間に卒業できれば良い事になっています。勉強が出来なくて、大学を辞めたと言う話は聞いた事がありません。途中で辞める人の多くは、自分にはむいていなかった事に気づいたか、経済的な事情かです。国公立の安い授業料でも、バイトをたくさんする時間的な余裕はないので、親がリストラされたりすると難しい様です(僕の同級生でも、それで辞めた者が居ます。最初は、新聞配達とかしながら頑張っていましたが・・・)。
卒業が出来れば、国家試験の受験資格をもらえます。歯科医師国家試験に関しては、昔から漏洩問題がしょっちゅう出てきますが、これは当然と言えば当然で、そもそも大学の先生達が、自分の教え子が受ける問題を作っているのですから。このシステムが変わらない限り、この手の問題はズーっと出てくるのではないかと思います。国家試験の難しさですが、これは6年間大学でしっかり勉強すれば、どうもないものです。しかし、これは以前の話で、歯医者が足りない時代はドンドン合格させて、ドンドン歯医者を増やす必要がありました。今は、歯医者が余ってきているので、そう簡単には合格させてくれません。そうなると、ますます漏洩問題とかが出てくると思います。でも、やっぱり普通に勉強していれば受かると思います。
晴れて、国家試験に合格すると。歯科医師免許証という一枚の賞状みたいな紙がもらえます。これの為に今まで頑張ってきたんだと思うと、ただの紙切れが輝いてみえます。ほんの一瞬ですが。
僕らの頃は歯科医師国家試験があるのは3月末で、合格して、歯科医師免許証が手元に届くのは八月頃でした。卒業後、普通の開業医に勤務する場合、勤め始めるのは4〜5月からで、歯科医師免許証が来るのはその後、という事になります。その間、資格が無いわけで、助手の仕事をしたりして、一般の歯科医院の流れをつかむわけです。そして、免許証が届いた日から徐々に患者さんを診ていくことになります。
人によっては、この辺りから、また、ひとつの大きな壁にぶちあたります。大学では、実習期間に、少数の患者さんを、担当の先生の厳重な監視下のもと診るわけですが、その場合、患者さんの方も、大学病院だと言う事で、安心して診療を任せています。ところが、ひとたび大学を出て、一般の開業歯科医院で患者さんを診る場合、患者さんの方は、その先生が卒業したてのぺーぺーである事も解かりませんし、また、何かあった場合、新米だからと言って、許してはくれません。大学病院では、大学病院という看板がありますから、余程の事が無い限りは、患者さんは、納得してくれるものです。ひとりの、歯科医師として、1対1での患者さんとの戦いが始まります。人対人です。
大学で学んだ、机上の学問は、ここではほとんど役に立ちません。頭の中で解かっていても、手が動かなければどうしようもありません。患者さんとの、楽しい会話の仕方など大学では教えてくれませんし、また、教わるものでもありません。僕が勤めていた診療所では、勤務して患者さんを2,3人診て、自信を無くしてしまい、辞めてしまった先生もいました。その先生は、新卒歯科医の学校のような所に入りました。確か、年間授業料200万円位だったと思います。卒業したと思ったら、又出費です。まあ、これは少ないケースですが。
数年間の修行の後、開業となる訳ですが、この数年間が人によってまちまち。卒業後、何年間とかいう決まりが無いので、早い人だと、卒業後半年ぐらいで、開業したりします。「半年だって、そんなの無茶苦茶じゃないか」と思う方もいらっしゃるでしょうが、大体、すぐに開業する先生の場合、類稀なる力量の持ち主で、人の10分の1位の時間で診療の基本をマスターしてしまうようです。実際、その様な人って、他の世界にも居ますよね。しかし、平均は5〜10年位で開業となります。医者と比較すると、かなり若くしての開業です。
開業する場合、まずは場所の決定です。(ここで、変に思う方も居るかもしれません。「何で、開業なんだ」と。歯科医師の場合、受け入れる大きな病院がたくさんあるわけでないので、最終的には、医師とは比較にならない位の割合で、独立開業します。)
歯科医院が過剰になってくると、近くに歯科医院がない所など、そう簡単には見つかりません。結局、歯科医院が既にたくさんある、駅前とか、交通の要所、商店街などに集中する事になります。以前は、開業して、成功する最大の条件が場所の選定でしたが、今は、どこに行っても、歯医者だらけなので、場所が成功要因に占める割合は、かなり低くなってきています。要するに、良い場所がなくなってきたのです。
では、成功するには何が大切なのか、この事は、診療方針の1ページ目に載っています。要素は沢山あるわけです。でも、最終的には、患者さん第一に考えていれば、潰れることはないでしょう。あと、十年間位は。それから後、今より更に歯科医院の数が増えて、虫歯の数も減ってきたら、もうどうなるかは解かりません。一説によると、20年後には、歯科医師の半数は失業するそうです。今からの、数年間が、その助走路で、10年後には、本当に大変な時代が来ると予想されています。でも、それは、患者さんにとっては、良い時代である事に間違いありません。
それなりの、医院としての条件がそろっていれば、開院してから、5年間位はどうやってももつでしょう。なにしろ、新しくて、綺麗なわけですから。それからは、先生の総合的な腕次第です。不幸にも、条件不充分で開院してしまった場合、その後大変な苦労を背負う事になります。
昔は、歯科医院を開くと言えば、銀行は喜んでお金を貸してくれたそうです。今は、他の業種と一緒で、しっかりした担保と事業計画がなければ、ビタ一文貸してくれません。せっかく、歯科医になっても、開業する時には、お金がまたまたたくさんかかります。貸し店舗だと4000万円、土地からだと1億円位が相場と言ったところでしょう。若くして、大借金を背負っての船出となります。そして、その先は、行けば行くほどに荒れてくる、嵐の大海原です。
この先の、歯科業界に関しては、いろんなデータバンクによると、後20年後には、歯科医師の30%ぐらいは失業すると出ています。そして残った歯科医師も青色吐息の状態だそうです。

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